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野球に対して思い入れが強かったキューバのフィデル・カストロ前国家評議会議長が25日、亡くなった。日本の野球界ともつながりがあり、関係者からは惜しむ声が聞かれた。
「気さくな人だった。本当にさみしい」。鈴木義信・全日本野球協会副会長(73)は、キューバで行われた野球の国際大会にコーチとして出場した際、試合前にカストロ氏が対戦相手のベンチを訪れ、選手一人一人と握手したことを今も鮮明に覚えている。「日本だけでなく、米国選手とも握手していた。野球選手時代にはメジャーリーグを目指していたとも聞く。背が高くて黒いひげが印象的だった」と振り返る。
鈴木副会長が医療機器メーカーの社長を務めていた2006年に商談でキューバを訪れた際には、カストロ氏と約3時間にわたって会話をした。この年に開かれた第1回ワールド・ベースボール・クラシックで、日本がキューバを降して優勝したことについて触れると「これまではアメリカの野球を勉強していたが、これからは日本の野球を目指したい」と言われたという。鈴木副会長は「選手の特徴について細かく知っていた。勉強家だった」と懐かしむ。
また、通訳としてキューバ代表チームと20年にわたって交流があった全日本野球協会の柴田穣事務局長(50)は、01年にキューバでスポーツ系の大学の開校式に招待された時、カストロ氏の演説を聞いた。約4時間、冗談交じりで行われ、漫談のようだったという。「聴衆はみんな笑って聞いていて、中には軍服姿で居眠りしている人もいた。民衆との壁がなく、懐の深い人だった」という。
カストロ氏の後押しを受け、五輪で過去3回金メダルを獲得しているキューバ。1994年から10年間で、のべ約100選手が日本の社会人野球チームにやってきた。近年はプロ野球にも人材を輩出し、今季はロッテのデスパイネや中日のビシエドが活躍した。柴田事務局長は「ライバルになるトップ選手が日本に来て、お互いに鍛錬していた。歴史に名を残した人を亡くした」と話した。【長田舞子】
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